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JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL

海外メディア芸術祭等参加事業

上映プログラム

Entertainment Selection 2015―エンターテインメント部門セレクション2015


本プログラムでは、平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門において受賞・審査委員会推薦作品に選出されたバラエティ豊かな作品の中から9作品を紹介します。

プログラム監修:久保田 晃弘(アーティスト/多摩美術大学教授/第16回〜18回エンターテインメント部門審査委員)


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3RD

Hedwig HEINSMAN / Niki SMIT / Simon van der LINDEN (オランダ)

優秀賞 3分33秒
プロジェクト紹介(インタラクティブインスタレーション)

インタラクティブインスタレーション作品『3RD』は、公共空間におけるソーシャルメディアの活用と、それに伴う知覚の変化に着想を得た作品。参加者は、鳥を模した“ヘルメット”を身に着けて、空間の中を歩き回る。ヘルメットの中のモニターには、外部のカメラを通じて俯瞰された自らの姿が映し出される。目の前にデジタルな分身が現れ、まるでゲームのように感じられる現実世界に、超・現実主義的な感覚が芽生えていく。客観的な視点と、主観的な感覚のズレを感じながらも、他者や周囲の環境を知覚していく本作は現実に対する新しい視点を投げ掛け、社会との新鮮な関係を築くものだといえる。


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Kintsugi

APOTROPIA (Antonella MIGNONE / Cristiano PANEPUCCIA) (イタリア)

優秀賞 4分30秒
映像作品

本作は作家の自伝的な物語に基づいて制作された映像作品である。作者のミニョーネとパネプッチャは、2003年に人生を大きく変えるほどの交通事故に遭った。作中で、ミニョーネは長年使用してきた松葉杖を用いて情動的なダンスを繰り広げる。タイトルの由来となった「金継(きんつ)ぎ」とは、壊れた陶器の継ぎ目を金で覆い修繕する日本の技法だ。破損した物を修復し、その継ぎ目に新たな趣を見出すこの技法は、物質の尊さや美しさはそこに積み重ねられた時間に宿るという価値観に根差したものといえる。作中で金継ぎは、肉体的・精神的な回復のプロセスの詩的なメタファーとして引用されている。彼女の涙が「金色の樹脂」になって自らの傷を癒し、トラウマを受け入れて変わることで、新しい可能性が開かれていく―。


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handiii

近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉 (日本)

優秀賞 3分
プロジェクト紹介(ガジェット)

『handiii』は3Dプリンターで出力したパーツと、スマートフォンを制御に利用した「気軽な選択肢」をコンセプトとした筋電義手だ。筋電義手とは、腕の皮膚上で計測される筋肉の微弱な電気信号(=筋電)を介して、直感的に操作できる義手のことである。技術そのものは戦前からあったが、市販価格は非常に高価であり、普及率は極めて低かった。本作では3Dプリンターとスマートフォンを活用することで、材料費を3万円以内に抑えている。またデザイン面においても、既存の義手が人肌に似せているのに対し、本作は腕時計やスニーカーのように使う人が気分や場面に応じて色やパーツを変更できるようになっている。更に外観だけでなく、指先にICチップやマイクを組み込むなど機能面の拡張を加えることで、あらゆる人々が羨ましいと思う義手を目指す。


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Ingress

Google's Niantic Labs(創業者:John HANKE) (米国)

大賞 2分6秒
プロジェクト紹介(ゲーム、アプリケーション)

『Ingress』は、文化的なランドマークや、歴史的な場所、ユニークな建築物といった実在の場を取り込んで、現実の世界を多人数の同時参加型ゲームへと変えるモバイルアプリケーションだ。GPSと世界地図のデータベースを使ってゲームの中の仮想世界を、現実の世界と融合して体験することができる。『Ingress』は、ゲームを通して現実の世界を探検するうちに、他のプレイヤーと交流したり、世界中の文化的な価値が宿る場所にたどり着いたりすることが意図されている。


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忍者女子高生|制服で大回転

『忍者女子高生』プロジェクトチーム (日本)

審査委員会推薦作品 3分26秒
映像作品

一見ごく普通の女子高生二人組が、学校を飛び出して、忍者のように街全体を縦横無尽に飛び回る映像作品。驚異的な身体能力を持った女子高生たちが、壮大な追いかけっこをしながらアクションを繰り広げる。スマホで動画撮影したように見せかけながら、CMとして制作された本作は、ネット上で公開され一ヵ月で600万回の再生回数に達し話題を集めた。


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5D ARCHIVE DEPT.

香月 浩一 (日本)

新人賞 3分5秒
映像作品

次世代に残したい風景や文化を映像で保存し、伝えるプロジェクト。「伝統的な音」をテーマに福岡・九州朝日放送(KBC)の地域プロモーションTV番組として制作された。博多織の織機が奏でる筬(おさ)打ちの音、簀桁(すけた)で和紙を溜(た)め漉(す)く音、木片を削る鉋(かんな)がけの音―。そんな伝統工芸が奏でる音を収録し、九州発のアイドルグループLinQによるテーマ曲「GARNET」のイントロとして編集。タイトルは、時空間(4D)と音(1D)を合わせた5次元のデータを保存する架空の部署の名称で、未来から来た美少女キャラクターのヒビキ・ガーネットが、音や景色、人々の想いをシュート(撮影)し後世に残すという設定だ。この番組自体が、現代的な感性がミックスされた伝統的な技術の映像アーカイヴとなっている。


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のらもじ発見プロジェクト

下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也 (日本)

優秀賞 2分51秒
プロジェクト紹介(ウェブ、オープンソースプロジェクト)

町のあちこちにひっそりと佇む看板の手書き文字には、データとしてきれいに整えられたフォントにはない魅力がある。不思議な愛らしさや人間味をたたえた「のらもじ」。このプロジェクトは風雨にさらされ経年変化し素材となじんだその様子に、デザイン的な魅力や古道具的、民藝的な魅力を積極的に見出し、愛でることから始まった。本プロジェクトでは発見した「のらもじ」を鑑賞し、形状を分析してコンピュータで使用可能なフォントを制作し、そのフォントはウェブ上で配布される。更に「のらもじ」を後世に残すサポートとして、フォントデータの代金を持ち主に還元している。本プロジェクトは、地方都市の景観の伝承であり、タイポグラフィにおける「民藝運動」ともいえる。


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Phenox

此村 領/三好 賢聖 (日本)

審査委員会推薦作品 6分40秒
プロジェクト紹介(ガジェット)

本作は、4つの回転翼を用いて飛行する、手のひらサイズのクアッドコプターだ。搭載されたコンピュータ、カメラ、マイクなどによって、人の声や動きに反応して飛行することができる。コントローラーに頼らず、人間との飛行ロボットのダイレクトなインタラクションを実現した、これまでにない飛行ロボットである。


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技術力の低い人 限定ロボコン(通称:ヘボコン)

石川 大樹 (日本)

審査委員会推薦作品 8分
プロジェクト紹介(ガジェット、イベント)

ヘボコンとは、ロボットを制作する技術を持たない人による「自称ロボット」が集結するロボット相撲大会だ。第一回の本大会には31体のまともに動かないマシンが集結した。思い描いていた設計は完成せず、考え抜いた作戦は裏目に出、口先だけの必殺技が飛び交う……。「ヘボい」からこそ愛おしい、そんなロボットたちの熱闘が繰り広げられた一日。