このプログラムは、第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門とエンターテインメント部門受賞作品及び審査委員会推薦作品から時代を映し出す9作品を収録し、紹介するものです。
アニメーションは、多種多様に存在する他者の世界に触れたり、気づいたりするきっかけを与えてくれます。というのも、私たちはアニメーション作品を視聴する際に、作家が各人の視座を通して制作過程で掴み取り、何らかのかたちで知覚可能にしてくれたものに出会うことになるからです。
このプログラムを通して、誰にも共有できなかった感情を発見したり、これまで知らずにいたことに戸惑ったり、慣れ親しんでいたつもりの事柄をより強烈に体感したりするかもしれません。
多様な他者と出会う機会をぜひお楽しみください。
プログラム名:「第25回文化庁メディア芸術祭受賞作品集」
キュレーション:文化庁
制作:文化庁メディア芸術海外展開事業
映像尺:1:14:19
コピーライト:© 2022 Agency for Cultural Affairs, Government of Japan All Rights Reserved.
骨嚙み
矢野 ほなみ
2021 / 日本 / 短編アニメーション / 0:09:45
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 新人賞
日本に点在する地域には「ほねかみ」という言葉があり、火葬後に骨を食べることで死者を一部として取り込み、哀傷を乗り越えようとする風習があります。のぞむとのぞまないに関わらず、私の故郷である島にはその風習を持つ家族がいました。初めての死は父のものでしたが、儀式として「ほねかみ」を試されるとき、私は骨を噛むことができませんでした。 そのことは、父の死と正面から向き会えず、どう受け止めて良いのかわからない経験として、子供心のトラウマになりました。空想の骨が喉につかえるように、言葉にできず、忘れることもできませんでした。 島の海岸部には火薬庫が今でも残されています。防空壕ではなく火薬庫が近所にあるという事実は、死や無慈悲な暴力は、私にとって、受ける側ではなく、加える側として存在しているように感じさせました。 大人になってこれらを思う時、私は父の骨と火薬庫の火を結び付け、もう一度「ほねかみ」と向き合ってみようと思いました。 本プロジェクトを通して、生死の境界を曖昧にしていくことで、かめなかった骨との対峙にしたいと考えました。
アニメーション・監督: 矢野ほなみ
プロデューサー: 山村浩二
アシスタントプロデューサー: sanae
製作: Au Praxinoscope
声: 田野彩雲
サウンドデザイン: 滝野ますみ
矢野 ほなみ
アニメーション作家
不安な体
水尻 自子
2021 / フランス、日本 / 短編アニメーション / 0:05:47
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 審査委員会推薦作品
身体は常に何か違うことを感じていたい、安定することがない「不安な物体」だと思う。 セロテープを指で引っ張って切る。そんな何気ない動作から身体は何を感じるだろう。 質感、形、伝わる感触、あらゆるイメージが境界なく呼び起こされ混ざり合っていく。感じることを繰り返して少しずつ変化していく身体の感覚を、アニメーションとして表現した作品。
監督・絵コンテ・アニメーション・編集: 水尻 自子
音楽: 本田 ゆか
ロゴデザイン: 中西 要介、寺脇 裕子
製作: ニューディアー&MIYU Productions
コミッション: 十和田市現代美術館
水尻 自子
映像作家
Steakhouse
シュペラ・チャデジュ
2021 / スロベニア、ドイツ、フランス / 短編アニメーション / 0:09:17
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 審査委員会推薦作品
数日漬けておいたステーキ肉に、熱したフライパン。フランクのお腹が鳴っている。しかし、リザの同僚たちが誕生日を祝うサプライズパーティーを準備していた。はたしてリザは時間どおりに家に帰れるのか?
アニメーション: Špela ČADEZ, Anka KOČEVAR, Zarja MENART, Clémentine ROBACH
シナリオ・脚本: Gregor ZORC
画像: Špela ČADEZ
映像編集: Iva KRALJEVIC
音響技師: Johanna WIENERT, bvft (sound designer)
録音: Julij Zornik
サウンドトラック: Olfamož, Tomaž GROM
制作会社: Finta Film
共同制作会社: Fabian&Fred, Miyu Productions
シュペラ・チャデジュ
アニメーション監督
Letter to a Pig
タル・カンター
2022 / フランス、イスラエル / 短編アニメーション / 0:17:00
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 優秀賞
ホロコーストの生き残りの男が、自分の命を救ってくれたブタに宛てて書いた手紙を読み上げる。 授業でその体験談を聞いている女子生徒が、奇妙な夢の世界に入り込み、アイデンティティ、集団的トラウマ、究極的な人間の本性に直面する。
アニメーション: Meton JOFFILY, Anne KRAEHN, Tal KANTOR
アニメーションインターン・ペイントアニメーション: Teresa BAROET
シナリオ・脚本: Tal KANTOR
背景: Dafi BEN-AMI, Tal KANTOR
俳優: Moriyah MEERSON, Alex PELEG, Ayelet MARGALIT, Indra MAHARIK
声: Alex PELEG
特殊効果: Shachaer KANTOR, Shahar DAVIS
映像編集: Efrat BERGER
D.O.P – Arbel ROM
撮影: Shahar DAVIS
音響技師: Erez EYNI-SHAVIT
音響編集: Erez EYNI-SHAVIT
録音: Erez EYNI-SHAVIT
サウンドトラック: Pierre OBERKAMPF
制作会社: Miyu Productions
タル・カンター
アニメーション作家/ビジュアルアーティスト
Cuushe “Magic”
田島 太雄
2020 / 日本 / ミュージックビデオ / 0:03:47
第25回 文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 審査委員会推薦作品
ミュージシャン・Cuusheの楽曲「Magic」のミュージックビデオ。フィルムメーカーである作者による実写の山岳と大地の壮大なランドスケープを背景に、軽やかで流れるような久野遥子の手描きアニメーションを組み合わせた。3人のクリエイターが音や映像でコミュニケーションを行い、2人の少女と動物たちが織りなす神話的な映像に結実させた。
ディレクター: 田島太雄
アニメーション: 久野遥子
Music: Cuushe
田島 太雄
ディレクター/映像作家
暗く黒く
はなぶし
2021 / 日本 / ミュージックビデオ / 0:04:18
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 審査委員推薦会作品
ずっと真夜中でいいのに。の楽曲「暗く黒く」のミュージックビデオ。文明が崩壊した地球に残されたメイド型のアンドロイドが、角が生えた赤ん坊を廃墟で見つけ、育児を始める物語が紡がれる。ボーカルのACAね氏による歌と詞を踏まえながら、世界観とストーリーの構築を行い、その表現に最適なデザインやアニメーション技術を採用している。スタジオを通さない個人制作でありながら、スタジオ制作を超えるクオリティを創意工夫で追求しつつ、フルリモートでの制作を完遂した。ずっと真夜中でいいのに。の特徴的な世界観を巧みに表現したことがアニメファン以外の幅広い層に支持され、MVの再生回数は4,000万回を超えている。
ストーリー・デザイン・監督: はなぶし
作詞・作曲・ヴォーカル: ACAね
編曲: 100回嘔吐, ZTMY
音響監督: MATSUMOTO Kohei
はなぶし
アニメーター/イラストレーター
PUI PUI モルカー
見里朝希
2021 / 日本 / テレビアニメーション / 0:02:40
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 ソーシャルインパクト賞
本作はストップモーションの手法で撮られたオリジナルアニメ。モルモットが車になった世界を舞台に、羊毛フェルトでできたモルモットのキャラクター“モルカー”たちが、表情豊かに動き回ります。 声優は実際のモルモットが担当し、実写の人間がピクシレーションで出演。クルマならではの様々なシチュエーションを中心に、癒しあり、友情あり、冒険あり、ハチャメチャアクションもありの「モルだくさん」アニメーションとなっています。
監督・脚本:見里 朝希
製作:MOLCARS
見里朝希
ストップモーションアニメーター/監督
I’m Late
冠木 佐和子
2021 / フランス、日本 / 短編アニメーション / 0:10:35
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 審査委員会推薦作品
あなたやあなたのパートナーの生理が来なかったり、遅れたりした経験はありますか?
監督: 冠木 佐和子
アニメーション: 冠木 佐和子、周 小琳、梅林 イクミ、清水 はるか
編集: Albane du Plessix
音楽: 光こ
制作会社: Miyu Productions、New Deer
冠木 佐和子
アニメーション作家/イラストレーター
The Fourth Wall
マフブーベフ・カライ
2021 / イラン / 短編アニメーション / 0:09:50
第25回 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 大賞
台所では、家や家族の関係性、欲求、願いごと、その他さまざまな物語が繰り広げられる。台所でひとりになった吃音症の少年が、想像の世界に浸る。
監督: Mahboobeh KALAEE
脚本: Mahboobeh KALAEE
撮影監督: Mahboobeh KALAEE
作画: Mahboobeh KALAEE
編集: Mahboobeh KALAEE
プロデューサー: Mahboobeh KALAEE & DEFC (Documentary and Experimental Film Center)
サウンドデザイン: Hossein GHOORCHIAN
ナレーション: Taha ASADI
出演: Mohammad Amin NEMATI
マフブーベフ・カライ
アーティスト/アニメーション映像作家