1月24日から2月15日まで、インドネシア第3の都市であるバンドン市のギャラリー「スラサール・スナリヨ・アート・スペース」にて企画展「クリプトビオシス:世界の種」を開催します。
文化庁海外メディア芸術祭等参加事業 企画展
「クリプトビオシス:世界の種」
会期:2015年1月24日(土)〜2月15日(日)
時間:10:00〜17:00 ※休館:月曜日・祝日
会場:スラサール・スナリヨ・アート・スペース(SELASAR SUNARYO art space)Bukit Pakar Timur No.100, Bandung – 40198, West Java, Indonesia
入場料:無料
※1/23(金)19:00よりオープニングイベントを開催します。
主催:文化庁
共催:SELASAR SUNARYO art space
協力:福岡アジア美術館
企画ディレクター:中尾 智路(福岡アジア美術館学芸員)
事業アドバイザー:吉岡洋(京都大学大学院文学研究科教授/美学・芸術学)
毛利嘉孝(東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授/社会学)
企画/運営:一般財団法人NHKインターナショナル
「クリプトビオシス:世界の種」について 企画ディレクター:中尾 智路(福岡アジア美術館学芸員)
2014年における美術史上最大の発見のひとつは、インドネシアのスラウェシ島で確認された世界最古の洞窟壁画ではないだろうか。手のかたちや動物の姿が描かれた古代の壁画は、スラウェシ島の大自然のなかで生きていた人々の、表現し、記録せずにはいられない衝動を、まるでタイムカプセルのように封じ込めている。
そもそも芸術作品とは、たとえそれが古代の洞窟壁画でなくても、作者がある時ある場所で体験した感動を封印したタイムカプセルなのである。そこに秘められた何かが、鑑賞する者との共感によって、再び生命を得たかのように動き始めるという意味において。
生物学では、厳しい自然環境を生き抜くために、動植物がその生命活動を一旦停止させることを「クリプトビオシス(Cryptobiosis):隠された生命活動」と呼ぶ。数千年前の種から発芽したハスの花や、宇宙空間に数日放り出されても死ななかったクマムシは、クリプトビオシスの驚くべき実例といえるだろう。つまり、クリプトビオシスとは復活することが前提となった休止であると同時に、生き残るための手段なのである。
ここではクリプトビオシスという生物学的な現象を、人間の社会的な活動やメディア芸術に敷衍することで人間の潜在能力や記憶、あるいは新旧の様式や技術、あるいは芸術の源泉として自然やアーカイブについて考えてみたい。そのために、文化庁メディア芸術祭のこれまでの受賞作品から、わたしたちの世界のどこかに埋もれ、その存在や価値が忘れ去られたものを、何らからの方法で甦らせようとする作品に焦点を当て、インドネシアのバンドンという場所に一堂に会してみようと思う。
中尾 智路/NAKAO Tomomichi
福岡アジア美術館学芸員/平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭選考委員
主な担当展示に「第5回福岡トリエンナーレ」、「アジアをつなぐ―境界を生きる女たち1984-2012」など。