ブラジル・サンパウロで 8月25日(月)から10月5日(日)まで開催される南米 最大の国際メディアアート・フェスティバル「FILE 2014」に参加し、企画展「Where Heaven meets Earth (天と地の出合う場所)」を開催します。
文化庁海外メディア芸術祭等参加事業 企画展
「Where Heaven meets Earth (天と地の出合う場所)」
会期:2014年8月25日(月)〜10月5日(日)
会場:Centro Cultural FIESP(FIESP文化センター)- SESI Art Gallery
(Paulista Avenue 1.313ブラジル・サンパウロ市)
入場料:無料
主催:文化庁
共催:FILE-Electronic Language Inernational Festival
企画ディレクター:楠見清(美術評論家/編集者/首都大学東京准教授)
事業アドバイザー:吉岡洋(京都大学大学院文学研究科教授/美学・芸術学)毛利嘉孝(東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授/社会学)
展示テーマとプランについて 企画ディレクター 楠見 清
古代においてメディア(medium)は天の言葉を地上に伝える霊媒師を意味したが、その役割は現代においても受け継がれている。かたちのない不可視で非実在の世界を、可視化し実体化(realize)するメディア芸術表現は、私たちの知覚や認識の外側──あるいは裏側──にあるイマジナリーな世界を、フィジカルな体験として提示してみせる。
対立、あるいは並行するふたつの世界を向かい合わせ、互いを受けとめるのに必要なものは、イマジネーションの器だ。それが天と地を接続し、横断し、反転するとき、滴り落ちた雲は池の水となって再び晴天を映すだろう。
雲が落ちてくると想像しなさい、庭に穴を掘ってそれを受けとめなさい。
Imagine the clouds dripping. Dig a hole in your garden to put them in.
オノ・ヨーコ、1963年春
Yoko Ono, 1963 Spring.
楠見 清/KUSUMI Kiyoshi
美術編集者/評論家、首都大学東京准教授
1963年生まれ。1995-97年『コミッカーズ』創刊編集長、1999-2000年『美術手帖』副編集長、2000-04年同編集長、2007-08年京都造形芸術大学客員教授を経て、現在首都大学東京准教授。日本出版学会、日本文化政策学会会員。主な著書に、『八谷和彦OpenSky2.0』 (2007年、NTT出版)、『ロックの美術館』 (2013年、シンコーミュージック・エンターテイメント)等。2008-09年、展覧会「KRASY! The Delirious World of Anime+Comics+Video Games+Art」 (バンクーバー・アートギャラリー、ジャパン・ソサエティー巡回)コキュレーター。
第1章
From Ukiyoe to Anime (浮世絵からアニメへ:降雨と反転)
第1の対比においては、昨年公開された2つのアニメーション映画の描写表現に着目する。吉浦康裕の『サカサマのパテマ』は、重力の反転したもうひとつの地下世界と地上世界との交感を描いたファンタジー長編アニメーションである。天空に向かって落下していく少女を地上に立つ少年が抱える姿は、画面に垂直的な強い緊張感と逆さまの対称性を生み出す。葛飾北斎の『冨嶽三十六景 甲州三坂水面』に描かれた二つの富士――現実的な夏の富士に対して湖面に映る冬山の「逆さ富士」――が想起される。石田祐康の『rain town』(2011)では、どこか寂しさとノスタルジアを感じさせるほの暗くも美しい世界(=rain town)を、静謐な音楽と降りしきる雨の音のみで優しく描いている。四季折々の自然に向かい合う日本の画家の姿勢は、昔も今も変わらない。さらに、浮世絵師・歌川広重の『大はしあたけの夕立』の画面を覆い尽くす雨の斜線は、実は当時最先端だった精緻な木版技術によって描かれていたことも、現代に通じる。
©Yasuhiro YOSHIURA /Sakasama Film Committee 2013
2013/劇場アニメーション/第17回アニメーション部門優秀賞
©石田 祐康
2011/短編アニメーション/第15回アニメーション部門新人賞
第2章
Physical World (上昇と下降:物理世界)
第2の対比では、上昇と下降のベクトルを持つ大掛かりな二つのインスタレーションが紹介される。和田永のサウンドインスタレーション『時折織成─落下する記録』は、高い柱の上に設置された旧式のオーディオ再生機から排出されたオープンリール・テープが音響とともに落下し終わると、再び巻き戻されて上昇していく。いっぽう、三原聡一郎『 を超えるための余白』は常に変化する現代の状況を具体的な形を持たない「泡」で具現化し、巨大な塊として変化し続け、空中に泡の柱が立ち上る。
©2013 WADA Ei
2013/メディアインスタレーション/第17回アート部門審査委員会推薦作品
©2013 Soichiro Mihara All rights reserved.
2013/メディアインスタレーション/第17回アート部門優秀賞
第3章
The World of Images and Information (上昇と下降:情報イメージ世界)
第3のパートは「情報世界」における上昇と下降である。土屋貴哉の作品は、単純な上下運動をランダムに反復するコンピュータ・プログラムであり、佐藤雅晴は日常の中の垂直的な動作だけを切り取り、短いループ・アニメーションにして機械的に繰り返してみせる。これら表層的な運動は、実体とともに意味からも離脱し、視覚的に純化されている。
© 2014 TSUCHIYA Takayoshi All Rights Reserved.
『Uphill』 2014/メディアインスタレーション
『Field running』 2012/メディアインスタレーション
©SATO Masaharu
Escalator Girl
Code/ Steps/ Elevator/ Toilet Paper, Nine Holes
『Escalator Girl』 2010/映像作品
『Code/ Steps/ Elevator/ Toilet Paper, Nine Holes』 2013/映像作品
第4章
Rounding and Floating (回転と浮遊)
第4のパートは音と映像がもたらす「回転と浮遊」である。実験的なミュージックビデオで注目されるSOURの『Life is Music』は、コンパクトディスクをフェナキストスコープ盤にして、音楽再生のための回転運動から始原的なアニメーションを再現してみせる。いっぽう、オリジナルのマンガの少女キャラクター表象を借りた匿名バンド、さよならポニーテールのミュージックビデオは、少女モデルを起用した実験的な実写映像で独特の浮遊感を漂わせている。
© SPACE SHOWER NETWORKS INC
©2013 Epic Records Japan
『さよならポニーテール「ヘイ‼にゃん♡」』監督:古賀 学 (2013/ミュージックビデオ)
『さよならポニーテール「無気力スカイッチ」』監督:青山 裕企 (2011/ミュージックビデオ)
『さよならポニーテール「空も飛べるはず」』監督:吉田 ユニ (2012/ミュージックビデオ)
イべント
■ワークショップ「世界のサイズを測直す」
講師:土屋貴哉+三原聡一郎
日時:8月28日(木)18:00〜21:00 会場:FIESP文化センター
対象:美術・デザインに関心のある15歳以上 定員:15 名
※参加される方はノートパソコンを持参
実体のないコンピュータ・プログラムをサーバ上に置く作品「ドメイン・シリーズ」の作者・土屋貴哉と、常に変化する現代を「泡」で具現化し、空中に泡の柱を林立させるインスタレーションの作者・三原総一郎によるワークショップ。私たちの住むこの世界を、メディア技術、あるいはメディア的な発想で再度確認をする試み。見える尺度で見えないものの大きさを、概念の尺度で見えるもののかたちを、捉え直す。
お申込方法: 「FILE」公式ウェブサイトより申込み(英語)
Workshop Remeasuring the Size of the Earth
http://file.org.br/highlight/file-sp-2014-workshop/
関連上映
■文化庁メディア芸術祭 受賞作品上映
日時:8月25日(月)〜10月5日(日) 会場:FIESP文化センター ※申込不要
FILE フェスティバル会期中、アニメーション部門「ANIMA+」の上映会場にて文化庁メディア芸術祭の受賞作品等を紹介するプログラム上映を行います。
「Animated Short 2014―短編アニメーション2014」
本プログラムでは、平成25年度[第17回]文化庁メディア芸術祭アニメーション部門において受賞・審査委員会推薦作品に選出された、バラエティ豊かな短編アニメーション13作品を紹介します。
「Beyond the Technology―デジタル技術を越えて」
デジタル技術は進化を続け、それを駆使した表現は現代の豊かな“多様性”を実感させます。本プログラムでは、作家の感性と、現代において共有されている想像力を映し出す14点の作品を紹介します。