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JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL

海外メディア芸術祭等参加事業

上映プログラム

Animated Short Program 2015―短編アニメーション2015


本プログラムでは、平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭アニメーション部門において受賞・審査委員会推薦作品に選出された、バラエティ豊かな短編アニメーション7作品を紹介します。

プログラム監修:小出 正志(アニメーション研究者/東京造形大学教授/第17回〜18回アニメーション部門審査委員)


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Poker

水江 未来/中内 友紀恵 (日本)

審査委員会推薦作品 3分37秒
短編アニメーション

本作は、2014年にデビュー10周年を迎えたトクマルシューゴのミュージックビデオであり、実験アニメーションの父・ノーマン・マクラレンの生誕100年を記念するオマージュ作品でもある。音楽とアニメーションが誕生する祝祭感を、ダイナミックなアニメートと、有機的なグラフィック、生命力にあふれたメタモルフォーゼで表現した。


JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL
境界線

中田 彩郁 (日本 )

審査委員会推薦作品 2分26秒
短編アニメーション

大小に変形する四角形で「境界」という概念を表現した作品。「境界」とは、主体の立ち位置により発現・発生するものであり、見え方や考え方にまで影響を及ぼす。本作では、境界に囲われた空間で、赤い服の少女が眠っている。しかし目が覚めると、少女はその場所が不自由に感じるようになる―。舞台『鑑賞者』(構成・演出:小野寺修二、 2013年)の劇中で、作品の一部が使用された。


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コップの中の子牛

朱 彦潼 (中国 )

新人賞 11分3秒
短編アニメーション

父が4歳の娘・ヌヌに牛乳の入ったコップの中に牛がいるという噓をついた。それを信じた娘は、牛乳を飲み干したが、牛はいなかった。ヌヌは、父が常にさまざまな噓をつくので次第に信頼しないようになる。作者自身の幼い頃の父との思い出に基づいて制作された短編アニメーション作品。日常生活の中にあるあらゆる形態の「噓」をすくいとって、子どもの視点から父の姿を描いている。柔らかいパステルの質感が印象的な多彩なドローイングが際立つ手描きアニメーションの技法を用いることで、80年代中国江南地方の小さな町の雰囲気が再現されている。


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PADRE

Santiago 'Bou' GRASSO (アルゼンチン )

優秀賞 11分3秒
短編アニメーション

軍事独裁が終わり、民主主義が芽生えつつある1983年のアルゼンチン。軍司令官を引退し、病床に伏す父親の看病にすべてを注ぐ一人の孤独な女性が描かれる。差し迫る社会変動を拒むかのように、ひたすら父親の看病に没頭する。外の世界は確実に変革をとげ、現実の叫びに耳を傾け行動を起こすよう彼女に迫る―。コマ撮りと3DCGの技法を用い、3年もの期間をかけて制作されたアニメーション。緻密にモデリングされた人物や小道具を撮影し、更にデジタルな処理を加え、重厚かつ独特な質感を生み出している。質の高い造形美と豊かな表現力で、日常を描写したアニメーション作品だ。


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The Wound

Anna BUDANOVA (ロシア )

大賞 9分21秒
短編アニメーション

心の傷(英・wound ウーンド)に苦しむ少女。その傷が少女の空想の中で、毛むくじゃらの生き物・ウーンドとして誕生するところから物語は始まる。かけがえのない親友として少女とともに成長していくウーンドは、彼女の頭の中にすっかり居ついて、だんだんと存在感を増し、やがてその人生を完全にコントロールするようになる。作者の幼い頃の記憶をもとに作られた本作は、数名の友人から成る少人数のチームで制作された。特に音作りにはこだわりがあり、水道管を用いて特殊な効果音をつくるなど独特なサウンドトラックを作るために、さまざまな工夫がなされている。少女とウーンドが繰り広げる、悪夢のようでありながらも美しい短編アニメーション。