現在ご覧になっているのはアーカイブサイトです。

JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL

メディア芸術海外展開事業日本のメディア芸術を世界へ

村田朋泰 ストップモーションアニメーション特集


 村田朋泰(1974年生)は、日本の伝統芸能であり、世界無形文化遺産でもある「文楽」からインスピレーションを得て、パペットアニメーションの制作を始めました。喜怒哀楽を主に一人で伝える太夫、音楽で心理、緊迫感、雰囲気を描く三味線、頭の角度や手の仕草で人形に命を吹き込む人形遣いで構成される文楽同様に、目、耳、肌、空気感で鑑賞する表現方法としてインスタレーションとパペットアニメーションを用いています。作品を通して、日本人のアイデンティティの1つである、あらゆるものが変転し移ろいゆくものにこそ美しさを感じる日本人の「無常観」を一貫して表現しようとしています。
 初期の作品、『路』シリーズでは、「言葉ではないもの、言葉にできないこと、些細なこと、些細なもの」を人形の目の動きと手の仕草で表現し、「不在」をテーマに常になき様という無常観を描いています。
 『家族デッキ』は、村田の近所にあった古い理髪店をモデルに、家族の日常生活を描いた作品です。また、その理髪店をミニチュアセットで再現した「すずらん理容店」のインスタレーション作品は、急速に変わり、移ろいゆく現代の景色を、その無常を記録する装置として制作しました。実在し、もう存在しない理髪店を用い、オリジナルの家族の物語を加えることで、村田は作品を記憶装置にしようと試みました。
 2011年の東日本大震災の後、村田は生と死に関する記憶の旅をテーマにした新しいシリーズの制作を始めました。このシリーズは、5つの物語で構成される予定で、現在は3つの物語、『翁舞 / 木ノ花ノ咲クヤ森』、『天地』、『松が枝を結び』が完成しています。このシリーズで、村田は、「祈り、記録、信仰」テーマとした物語で「無常観」を描こうしています。


Tomoyasu Murata
【プロフィール】

東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2002年同大学院デザイン科修了。2001年に人形アニメ『睡蓮の人』で文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。また「朱の路」で広島国際アニメーションフェスティバルにおいて優秀賞を獲得。Mr.ChildrenのPVや、ap bankのPVなどを手掛ける。


上映作品

睡蓮の人 (2000) (16min.)
睡蓮の人” (2000) (16min.)

平成13年度 第5回/アニメーション部門/優秀賞
「遠い記憶」なつかしくて、せつなくて、微笑ましい思い出。かわらない日常の中のふとしたきっかけから記憶のかけらが蘇る。
かけらとかけらとが、やがてひとつの遠い記憶として姿を表す。
それはまるで大切な人からのメッセージのように。
©TMC

“朱の路”(2002) (13min.)
朱の路”(2002) (13min.)

平成14年度 第6回/アニメーション部門/審査委員会推薦作品
暗く長いトンネルを走る列車。悲しみを抱えた男は朱の花を差し出す少女と出会い、短い旅へと向かう。言葉ではないもの、言葉にはできないもの。些細なこと。些細なもの。その短い旅の終わりに男は長く暗いトンネルを抜ける。
©TMC

家族デッキ Vol.1・Vol.2・Vol.3・Vol.5・Vol.6 (2007) (21min.)
家族デッキ Vol.1・Vol.2・Vol.3・Vol.5・Vol.6” (2007) (21min.)

平成21年度 第13回/アニメーション部門/審査委員会推薦作品
東京の下町にある床屋を経営する高田家は、両親と中学生のお姉さん、小学生の弟の4人家族。この床屋に住まう七福神(髪様)のいたずらで、高田家の日常にはちょっと不思議な出来事が起こります。その間にも家の中にはゆっくりと時間が流れ、それぞれの生活が描かれていきます。
©TMC

白の路 (2003) (14min.)
“白の路” (2003) (14min.)

少年と少女が過ごした短い秋の思い出。それは大人になっても忘れることのない記憶と切ない痛みだ。男は自分が少年だったころの路を辿る。どこまでも真っ白な景色を駆けていくように。
©TMC

木ノ花ノ咲クヤ森 (2014-2015) (11min.)
木ノ花ノ咲クヤ森” (2014-2015) (11min.)

”東日本大震災をテーマにしたシリーズ「生と死にまつわる記憶の旅」の第1章”
記憶を失った主人公は過去の痕跡を探しながら、すべて消し去ろうとする二人のハンターから逃走している。翁は、変わらないでほしい願いと、変わってゆく現実を語り継ぐ存在として登場し、忘却の縁(ふち)として静かに舞い続ける。
©TMC

天地 (2016) (10min.)
“天地” (2016) (10min.)

”東日本大震災をテーマにしたシリーズ「生と死にまつわる記憶の旅」の第2章。”
その島は、幾度となく火山の噴火と地震を繰り返し、その形を作ってきた。地面から煙が上がり、地中ではマグマが静かに燃えている。そうしてできた島は、やがて白い砂に覆われ、どこからか湧き出た水が川になった。その水は森をつくり、命をつくった。
©TMC

松が枝を結び (2017) (16min.)
“松が枝を結び” (2017) (16min.)

”東日本大震災をテーマにしたシリーズ「生と死にまつわる記憶の旅」の第3章。”
津波で引き裂かれた双子。スノードームは、現在と過去を結ぶ。現在と過去を行き来しながら、死者は記憶を取り戻していく。月と太陽が重なり、過去と現実がつながるうさぎ男は、記憶を取り戻した少女を黄泉の世界に導く。
©TMC

TOP