和田淳 特集
和田淳氏のアニメーションは、人間の五感、すなわち視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を刺激します。登場するキャラクターたちの皮膚感覚や気持ちよさなどが、ユニークな動きの表現によってリアルに伝わって来ます。
更に、彼は、人間の知覚を超えた先にある、空気や予感など、無意識下にある形にならない感覚まで表現しているように思えます。彼の作品の中には、‘物語’があります。それは単なるストーリーではなく、人や動物などの登場人物が互いに響き合い醸し出す詩のようなもので、簡素化された舞台で、余計なものをそぎ落とした動きと舞と音楽で演じられる日本の「能」にも通じるものがあります。文化庁メディア芸術祭優秀賞作品『わからないブタ』やベルリン映画祭で銀熊賞をとった『グレートラビット』、依頼作品集まで和田淳監督の世界をお楽しみください。
キュレーター:岡本美津子(東京藝術大学副学長)
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1980年兵庫県生。2002年頃から独学でアニメーションを制作しはじめ、「間」と「気持ちいい動き」を大きなテーマに制作を続けている。『わからないブタ』(10)がファントーシュ国際アニメーション映画祭でBest film、文化庁メディア芸術祭で優秀賞等国内外の映画祭で受賞。『春のしくみ』(10)がベネチア映画祭オリゾンティ部門で上映され、『グレートラビット』(12)がベルリン国際映画祭短編部門で銀熊賞を受賞する。
上映作品
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“係” (2004) (6min.)
係には係の仕事があります。
係は係の仕事をします。
それが係です。
© Atsushi Wada
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“鼻の日” (2005) (10min.)
気持ちいい鼻にまつわる触覚アニメーション。
毎日が 鼻の日 でありますように・・・。
© Atsushi Wada
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“声が出てきた人” (2006) (5min.)
人間が一生涯でしゃべる言葉の数は決まっていて、それを誰かにどこかから操作されているとしたら、こんな感じなのだろう。
アニメーション生誕100年記念オムニバス映画『TOKYO LOOP』参加作品。
© Atsushi Wada
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“そういう眼鏡” (2007) (7min.)
素材、由来、意味、価値。眼鏡に対する疑問が浮かんだ時はこう解決すればいい。
「これはそういう眼鏡なのだ」と。
© Atsushi Wada
“わからないブタ” (2010) (10min.)
ブタと人と犬の微妙にズレた関係を描くズレアニメーション。
ズレをズレとして許容できるのだろうか。
© 2010 Atsushi Wada / Tokyo University of the Arts
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“春のしくみ” (2010) (4min.)
誰でも一年に一度はおそわれるという春のウズウズ感。この春のウズウズ感のメカニズムの解明に果敢に挑んだ研究アニメーション。
© Atsushi Wada
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“グレートラビット” (2012) (7min.)
かつて我々は自分たちとは違う、崇高で深遠で神秘的な存在をグレートを付けて呼んでいた。
時代はすすみ思考や思想がそれまでのものと変わった今、未だにグレートと呼ばれ続けるその存在のグレートたる由縁は何なのか。
© Sacrebleu Productions - CaRTe bLaNChe - Atsushi Wada - 2012
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“Anomalies” (2013) (3min.)
ネッシーが初めて写真に撮られて80周年を記念して「Secret Monsters」をテーマにいろんな作家が映像をつくるというイギリスのテレビ局チャンネル4からの依頼で制作した作品。ネッシーは出てきません。
© Atsushi Wada MMXIII
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“秋 アントニオ・ヴィヴァルディ「四季」より” (2018) (11min.)
東京藝術大学がヴィヴァルディ「四季」映像化プロジェクトと題し、アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」の春夏秋冬をそれぞれ4人のアニメーション作家が映像化する企画を立ち上げ、そのなかの秋を依頼され制作した作品。
©2018/Tokyo University of the Arts
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“依頼作品集” (2013-2019) (9min.)
© 2019 Atsushi Wada