NEW MOTION - Short films
日本のショートフィルムの中で、独自の表現、新しいアイデアなどを持った実験的、野心的作品を集めました。短編作品では、クリエーターは自分のやりたいことや表現したい世界を限られた時間の中に凝縮して伝えます。伝統的なアニメーションだけでないこの多様性が表現の新しい可能性を開くものと考えます。
文化庁メディア芸術祭受賞者を中心に、既存のジャンルやメディアにこだわらない新進気鋭の監督たちの作品が上映されます。ナラティブなもの、ユニークな手法のもの、音楽とのコラボレーションなど作者の個性の競演を楽しんでいただければと思います。
監修:岡本美津子
“えーん” (2018)
冠木 佐和子
赤ちゃんの泣き声のざわざわと、私が今まで経験してきたざわざわをシンクロさせてみました。
みんな泣きながら産まれて、泣きながら大きくなりましたね。
私は赤ちゃんに戻りたいです。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。 アダルトビデオ制作会社に就職、退職。 その後多摩美術大学大学院修了。人間の営みの全てを愛情とユーモアと共にカラフルに表現し続ける、唯一無二のオリジネイター。
“Rayons ft. Predawn - Waxing Moon” (2015)
Tao TAJIMA
Rayons ft. Predawn - Waxing Moon のミュージックビデオ。
フランス語で光線の意味を持つRayonsとWaxing Moonというタイトルから、インスパイアされた”光”をテーマに黄昏時の世界を描いている。
ディレクター、兼、映像作家。
3DCGソフトとモーショングラフィックスを活用した映像作品「Night Stroll」
tofubeatsの「朝が来るまで終わる事のないダンスを」MVを撮影するなど、光を巧みに駆使した表現で何気ない日常の風景を一変させる世界観が特徴。
“幕” (2014)
水尻 自子
狂言の舞台、眼科の診察室、寿司屋のカウンター。
それぞれの空間で向かい合う二人の間に漂う距離、感覚、欲求。
どこかで感じたような感触をアニメーションという手法でもう一度産み出し、じっくりと確かめる。
1984年生まれ。身体の一部や寿司などをモチーフにした感触的なアニメーションをつくる映像作家。
“Rabbit's Blood” (2017)
Sarina NIHEI
不吉なローブをまとった人間たちと、人のような体をして地下で暮らす中立主義のウサギたちの、対立社会を描いたストーリー。
日本のフリーアニメーション監督。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート卒。当時制作した「Small People With Hats」は、2015年オタワ国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞している。手描きアニメーションを専門とし、超現実的なストーリーを好む。
“Layers Act” (2018)
ユーフラテス (石川 将也) + 阿部 舜
シンプルな模様の描かれた2枚のレイヤーを重ね動かすことで作られる、多彩な視覚効果で構成された映像作品。かつて、コンピューターグラフィックスの登場以前に用いられていた特殊効果アニメーションの手法を研究し、発展させることで生まれた映像。楽曲『AUDIO ARCHITECTURE』に合わせて、模様の描かれたセルシートを手で動かしている様子を撮影。生理的な気持ち良さを追求して編集した。
石川将也
1980年生まれ。クリエイティブグループ ユーフラテス 所属。慶應義塾大学佐藤雅彦研究室を経て、2006年より現職。テレビ番組 NHK Eテレ「ピタゴラスイッチ」や「Eテレ2355」「Eテレ0655」などの映像制作に携わっている。
阿部舜
1991年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 修了(佐藤雅彦研究室)。ASK?映像祭2015コンペティション部門久里洋二賞、第21回学生CGコンテスト水江未来賞 受賞。
“L’Œil du Cyclone” (2015)
平岡 政展
変化しようとする精神、身体、しかし自分自身から逃れることは出来ずに、また戻ってしまう。
自己愛をテーマにし、変化しつづけるアニメーションで表現している。
1986年生まれ。東京在住、映像会社キャビア所属。
“見なれぬものたち” (2017)
薄羽 涼彌
見なれないけれど、そこではそれがあたりまえな世界の、とある話。
CGアニメーション、ビデオゲームなどの制作を行う作家。近年の主な仕事は「手のなる方へ」(監督)、「マイエクサイズ」(プログラマー)など。
“戯言スピーカー (Sasanomaly)” (2014)
牧野 惇
自身を守るために他との関係を断ち心に篭ろうとする少年の心情を、マッチ箱をモチーフに描いている。マッチ箱の中に作られた小さな世界と、たくさんのそれらが集まって形作られる世界とで、この映像は構成される。60個にもなるマッチ箱は監督自身がデザインし、製作した。その殆どのデザインは敢えて歌詞との関連性を排除しつつ、要所で連動させることで印象付ける工夫を施した。技法はストップモーション、ロトスコープ、手描きアニメーション、CGを併用している。
1982年生まれ。2006年よりチェコの美術大学UMPRUMのTV & Film Graphic学科にてドローイングアニメーション、パペットアニメーションを学んだのち、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。実写・アートワーク・アニメーションの領域を自在に跨ぎ、映像ディレクション、アートディレクションから、キャラクターデザイン、イラストレーションまで総合的に手掛ける。
“てんとう虫のおとむらい” (2005-2006)
近藤 聡乃
絵本の怖いページを開かずにはいられなかったこと。何度も繰り返しみる悪夢があったこと。てんとう虫の足の節からでる黄色い汁がとても苦かったこと。
子供の頃の「怖かったこと」が、今では美しいものとして懐かしく思い出され、現実に起こったことも、夢でみたことも愛着のある悪夢として記憶されている。
「てんとう虫のおとむらい」はこのような「子供の頃に繰り返しみた悪夢」をもう一度みるためのアニメーションである。
1980年千葉県生まれ。2003年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2008年よりニューヨーク在住。漫画、アニメーション、油絵などその表現方法は多岐にわたる。
“ロックン・ロール・マーチ/ 大滝詠一” (2019)
大西 景太
1970年代のポップ・ミュージックに対して現代の作家がミュージックビデオを制作する、という企画を元に作られた。シンガー/ソングライターである大瀧詠一が棺桶の中から蘇り、歌いながら楽音の妖怪たちと行進する。途中ではエルビス・プレスリーに扮したりしつつ、最後は光の中へと消えて行く。楽曲はニューオリンズの葬送行進に使われるセカンドラインというリズムをモチーフとしている。
映像作家。1980年生まれ。音楽の構造や音の質感をアニメーションで表現する手法を用いて、映像インスタレーション作品やミュージックビデオを制作する。