ANIMATIONISMAll Creativity Welcomed
企画テーマ
日本のアニメーション制作者たちに、制作のモチベーションを聞くと、多くの人が「面白いことがやりたい」と言う。これを英語で訳そうとすると、とてもニュアンスが難しい。「Funny」、「Interesting」、「Fabulous」、どれも当てはまらない。あえて言うなら、「見たこともない新しいもの」で、「ファンが驚き、喜ぶ」もの、「プロ同士はジェラシーを感じる」もの、そんな「チャレンジングなこと」をやりたい、みたいな意味であろうか。
扱うテーマやモチーフであったり、ストリーテリング、作画や美術などのアニメーションの技術であったり、スタッフ構成や制作システム、そして音楽や出演者など、それぞれの局面において「面白い」を追求することが彼らのモットーであり、その結果、日本のアニメーションシーンは、“多種多様なユニークなものが一同にある状態”となっている。大人から幼児までのあらゆるターゲット層向け、少年、少女のヒーローから、ロボットやミクロの世界のキャラクターまで、伝統的文化からスポーツ、音楽をテーマとしたもの、そしてアートとしての表現から立体、最近はVRまで、日本ではありとあらゆる創造物が作られ、受容されている。しかもそれは毎年ダイナミックに変化し続けている。
私は、あらゆる創造を良しとするこの態様こそが、日本の『ANIMATIONISM』であると考える。そして、日本の今のアニメーションシーンを世界のオーディエンスに感じてもらえるように、次の3つのテーマに基づいたキュレーションを行った。
- 次々と“面白い”作品を生み出しているクリエイティブなスタジオ「Studio 4℃」「Science SARU」「TRIGGER」「TECARAT」の特集
- 作者のクリエイティビティを最大限に表現した短編アニメーションプログラム
- 日本のアニメーションシーンを牽引する今注目すべき制作者たちの紹介「Creator’s File 2020」
2020年、世界は新型コロナ感染拡大の影響で、これまでの社会のあり方の変容を余儀なくされた。毎年盛大に開催されていたアヌシー国際アニメーション映画祭も残念ながらオンラインでの開催となり、この『ANIMATIONISM』特集もweb上でのものとなった。
リアルな世界での活動が制限されている今だからこそ、人間のCreativityが発揮されることが期待されており、故に、全てのCreativityが歓迎される日本のアニメシーンを紹介する意義があるのではないかと考える次第である。
このサイトを通じて世界の人々が日本の『ANIMATIONISM』を感じ、たくさんの世界の若者たちが、日本のアニメーション界に興味や関心をもってくれたら幸いである。
2020年6月
文化庁メディア芸術海外展開事業(アニメーション)
企画ディレクター 岡本美津子
岡本美津子プロフィール
プロデューサー/東京藝術大学副学長、同大学院映像研究科教授
数々のテレビ番組や映像、イベント等のプロデュース、キュレーションを行う。
主なプロデュース番組に、「デジタル・スタジアム」(2000-2006)、NHKEテレ月〜金放送中の「2355 」「0655」(2010-)、Eテレ「テクネ~映像の教室」(2011-)。
主なプロデュースイベントに「デジタルアートフェスティバル東京」(2003-2005)、「東京藝術大学ゲーム学科(仮)展」(2017)「東京藝術大学ゲーム学科(仮)0年次制作展」(2018)、「ART of 8K」展(2018)など。
審査員・キュレーターとして、毎日映画コンクールアニメーション部門審査員(2019)、文化庁メディア芸術祭海外展として、アヌシー国際アニメーションフェスティバルにおいての、2018年2019年および2020年の総合ディレクターを務める。