水尻自子特集
水尻アニメーションとの出会いは、たしか女子美術大学の卒業制作展を見た友人が放った「タクさんの好きそうなアニメーションがあるよ」の一言だった。
その作品「かっぽ」から「布団」「幕」へと水尻ワールド全開に至るまでそれほど長い時間は要しなかった。
彼女好みの音楽と独特の時間の流れ方は視覚と聴覚というよりは嗅覚、触覚、味覚に訴えかけてくる。エロチシズムを感じるというより、例えていうなら、たまたま巡り合った極上の赤身が口の中でとろける満足感に近いものがあるとボクは常日頃から思っている。
監修:古川タク
1984年青森県十和田市生まれ。
映像作家。
身体の一部や身近なモチーフをアニメーションで感触的に表現する映像作家。
上映作品
“しりプレイ” (2005) (4分39秒)
お尻と指が遊ぶように動く、初のアニメーション作品。(音無作品)
© Yoriko Mizushiri
“かっぽ” (2007) (4分35秒)
ハイヒールを履いた足がただひたすら闊歩していくアニメーション。
© Yoriko Mizushiri
“えにょぐ” (2007) (3分56秒)
絵具が生き生きと動き回るコマ撮りアニメーション。
© Yoriko Mizushiri
“すし” (2011) (2分28秒)
寿司は魅力的な物体である。描いて良し、触って良し、食べて良し。
© Yoriko Mizushiri
“□□□(クチロロ)「海」” (2009) (1分49秒)
クチロロの作品「everyday is a symphony」より、収録曲「海」ミュージック ビデオ。Direction&Animation: 水尻自子、Produce: 伊藤ガビン。
© Yoriko Mizushiri / © commmons / avex
“布団” (2012) (6分3秒)
布団の中に入る。頭に浮かぶ記憶、想像する此の先、思い起こす感触、染みついた性、何もかも一緒に気持ちよくとろけていく。布団の中で身体が感覚を求めて彷徨う。
© Yoriko Mizushiri
“かまくら” (2012) (5分24秒)
私の故郷に降る雪はとても柔らかく清らかである。その雪が少しも汚れないような、静かなアニメーションを作った。そこに怪しげな意味など存在するはずはなく、表現されている動きは普遍的でありふれたことだと感じる。
© Yoriko Mizushiri
“幕” (2014) (5分25秒)
狂言の舞台/眼科の診察室/寿司屋のカウンタ、それぞれの空間で向かい合う二人が居る。二人の間には、守らなければいけない少しの距離がある。その距離の間には、なんだかこわいような、心地いいような、ふんわりと柔らかくで、もっと欲しくなく感触が漂う。欲した感覚はあっという間に動き出し、弄っていく。
© Yoriko Mizushiri
“蓮沼執太「テレポート」” (2017) (3分00秒)
「幕」の音を担当した蓮沼執太の楽曲のためにアニメーションMVを制作。
© Shuta Hasunuma / © Yoriko Mizushiri
“Audio Architecture -airflow-” (2018) (5分8秒)
2018年に”21_21 DESIGN SIGHT"で開催された「Audio Architecture/音のアーキテクチャ展」で制作された作品。本映像は、その展示で上映した映像を、コーネリアスのライブ映像用に再編集したもの。
ユーモラスで官能的な線の動きによって、観る人の触覚をくすぐったり内臓をまさぐったりするアニメーションを制作する水尻自子が、楽曲の歌詞のなかでさまざまな感覚が対比される構造に着目しながら、感覚の微小なズレを表現。寿司、ティッシュ、風船といった卑近な物体が複数個ならび、最初は同じ動きを見せるが、それぞれ別々に作画されているので、自然と形や動きに小さな差異が生まれていく。
© Yoriko Mizushiri, 2018 / created for Exhibition“AUDIO ARCHITECTURE”at 21_21 DESIGN SIGHT, 2018
“【うたテクネ】 来生たかお「マイ・ラグジュアリー・ナイト」” (2019) (2分33秒)
まだミュージックビデオが一般的ではなかった時代の名曲、来生たかお「マイ・ラグジュアリー・ナイト」(1977年)に、新たに制作したミュージックビデオ。
© Yoriko Mizushiri / © NHK