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JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL

海外メディア芸術祭等参加事業日本のメディア芸術を、世界へ。

tricky women 2017

レポート

今年度最後の重点参加地となるウィーンでの企画展を、女性作家の作品のコンペティションや上映が行われる映画祭「tricky women 2017」と共催で開催しました。ギャラリーBildraum07にて、文化庁メディア芸術祭受賞作品を中心とした企画展「しなやかに、したたかに」を開催。展示、上映のほかライブパフォーマンス、トークイベント、ワークショップを実施しました。映画祭会場の劇場Metro Kinokulturhausでは、本企画展キュレーションプログラムと長編アニメーション「たまこラブストーリー」(第18回アニメーション部門新人賞)の上映が行われました。


オープニング ライブパフォーマンス

3月16日(木)19時から行われた企画展のオープニングは、140名以上の出席者が集う盛況となりました。「tricky women 2017」のフェスティバルディレクターや、本企画展の企画ディレクター・岡本美津子氏らの挨拶に引き続き、真珠子が屏風にライブペインティングを行うパフォーマンスを行いました。出席者は次々にカメラでその様子を撮影、その後も真珠子との記念撮影の申し出がイベント終了まで続きました。


キュレーションプログラム上映

「しなやかに、したたかに」というテーマのもと、岡本氏によってキュレーションされた、女性を表現することに取り組んできた女性アーティストの12作品のプログラムが、映画祭会場のスクリーンで上映されました。上映に先立って、岡本氏がプログラムの解説を行いました。


キュレーターズ トーク

3月17日(金)には、岡本氏と、出展作家のこうの史代氏によるトークイベントが行われました。テーブルに、こうの氏のデビュー作から最新作までの単行本が並べられ、岡本氏がそれらを次々と紹介する形でトークが展開されました。こうの氏の作品の多くの主人公が女性であること、その女性の描き方などについて、作家が主人公や作品に込めた思いを直接聞くことができた貴重な機会となりました。


参加者の声

岡本 美津子(東京藝術大学大学院映像研究科教授)


tricky women festivalは女性監督作品を集めたアニメーションフェスティバルとして、2001年からオーストリアウィーンで開催されている映画祭である。コンペ作品や上映作品の質も高く、また、フェスティバルディレクターやスタッフの意識とモチベーションも高く、参加者たちのコミュニケーションを重視しており、また、ウィーンのオーディエンスの質も大変高いという、小さいながらも心の籠った大変素晴らしい映画祭であった。本映画祭で文化庁ディア芸術祭企画展として、展示と上映プログラムの提供を行った。展示については、女性作者によるマンガ作品、映像作品、絵画、インスタレーション、ライブパフォーマンスなど幅広い表現をあえて取り入れてみたが、来場者の評判も良く、今の日本のメディア芸術シーンの多様さと自由さをアピールできたのではないかと思っている。折しも、今年の日本のメディア芸術祭の顔とも言える、こうの史代先生の参加という大変ビッグな出来事もあり、非常に盛り上がった。上映に関しては、12本の短編作品と1本の長編を上映した。観客の入りと反応も良く、何人かのディストリビューターたちから、海外で上映するにはどうすればいいかなどの質問も受けた。更には、フェスティバル側が自主的に、日本フォーカスのプログラムを組み、今年のTricky Women Festivalは日本一色で盛り上がった。全体的にこの企画は大成功であったのではないかと自負している。
 日本からの参加者の女性作家たちのみならず、上映作者の中には、自費で来た積極的な作者もおり、非常に良い機会を女性作者たちに与えることになった。文化庁メディア芸術祭等海外参加事業企画展の「人材育成」の意義は十分にあったのではないかと思う。

こうの史代


皆さんの映像作品も見ることができて、私とは違う”畑”で頑張っている女性がたくさんいらっしゃるんだなと、すごく刺激を受けました。マンガは、だんだん型にはまっているように思っていたのですが、もっと勇気を出して自分たちの殻を破る努力をしなければいけないと思いましたね。

真珠子


今までやったことのない事を絶対にやりたいと思って、観に来て下さった方々が期待して下さる以上のものを出していきたいと思っていました。感じるままに観てもらえれば、それでうれしいです。

日本の女性作家作品の魅力を発信。ウィーンにて企画展を開催

2017年3月15日(水)から3月19日(日)まで、オーストリア・ウィーンで行われるアニメーションフェスティバル「tricky women 2017」にて、文化庁海外メディア芸術祭等参加事業主催の企画展「しなやかに、したたかに」を3月16日(木)から23日(木)まで開催します。また、映画祭会場にて、キュレ―ションプログラムの上映などを行います。

展示作品

『KiyaKiya』

近藤 聡乃

[2012/短編アニメーション/第16回アニメーション部門審査委員会推薦作品]インスタレーション展示

タイトル「KiyaKiya」は、澁澤龍彦『少女コレクション序説』中の「幼児体験について」という一編で出会った「胸がきやきやする」という古い日本語からの造語である。「何とも説明しがたい、懐かしいような、気がかりなような気分」「既視感」の気分を表わすそうだ。この気分の考察が本作のテーマである。
(6 min. 39 sec.)


『この世界の片隅に』

こうの 史代

[2009/マンガ/第13回マンガ部門優秀賞]原画、複製原画、関連資料展示

作者の代表作となった『夕凪の街 桜の国』の第2弾ともいうべき作品。戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。広島の漁師町に育ち絵を描くことが好きな浦野すずが主人公。呉の高台の町に住み海軍で働く北條周作へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑いながらも一日一日を確かに健気に生きていく物語。


『夕凪の街 桜の国』

こうの 史代

[2004/マンガ/第8回マンガ部門大賞]複製原画展示

昭和三十年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の視線で描く、原爆投下の現実とその後の日々。市井の人々にとって、戦争とは何だったのか、原爆とは何だったのかを問う作品。


『ゆきすすみさりゆき』

くわがた

[2014/短編アニメーション/第19回エンターテインメント部門審査委員会推薦選出作家]アニメーション上映

画面をスクロールすることで動き出すアニメーション作品。一人の女の子が、流れる景色と共に歩いて行く。ぼんやりと淡い色彩で描かれた空間は少しずつ崩れ去っては、つぎはぎされ、決して完全には壊れない。スクロールを続ける限り決して終わらない世界はどこか、懐かしく、寂し気でもある。
(2 min. 01 sec.)


『2.5次元マスク』

くわがた/ 岩淵 真紀/ 宮崎 まり

[2014/ウェブ/第19回エンターテインメント部門審査委員会推薦作品]インスタレーション展示

ウェブ上でオープンソース化された型紙をダウンロードし、家庭用A4プリンターでつくることのできるペーパークラフトのマスク。着用した人々は、“誰でもない誰か”、“誰でもないキャラ”となり、着用画像は、ウェブ上で公開することができる。アニメーションのキャラクター風のマスクを被るという行為が収められた画像は、2次元/3次元を通り抜ける際の「2.5次元」の世界を喚起させる。


『布団』

水尻 自子

[2012/短編アニメーション/第16回アニメーション部門新人賞]アニメーション上映、関連資料展示

布団のなかに入る。頭に浮かぶ記憶、想像する此の先、思い起こす感触、染みついた性、何もかも一緒に気持ちよくとろけていく。布団のなかで身体が感覚を求めて彷徨う……。紙に作画し、それをトレーシングペーパーを通して画面に取り込むことでやわらかい質感を作り出している。動きと感覚の連鎖をテーマにした作品。
(6 min. 02 sec.)


『祈念』

真珠子

[2012/屏風画]インスタレーション展示・パフォーマンス

故郷、熊本県天草市の女性史に近代の女性人身売買の歴史があることを知った真珠子は、自分の作品を身に纏い演じ、撮影した。


『真珠子ワールド』

真珠子

[2011―2016]映像作品上映

真珠子の代表作を集めたビデオコレクション。女性が年を重ねることをテーマとして制作したアニメーション作品から、アイドルPV、活弁パフォーマンスまで、幅広い真珠子の世界を紹介。


『やますき、やまざき』

ししやまざき

[2013/短編アニメーション/第17回アニメーション部門審査委員会推薦作品]
アニメーション上映

うれしい時、喜んでいる自分にまたうれしくなり、理由も忘れ、全身を巡る喜びは、悲しみや狂気までもを包括して花開く……。2013年の正月に向けて制作され、新年が幕開けるというだけで喜ばしいという「あっけらかんとしためでたさ」と、作者が日常的に感じている「理由を忘れるほどの大きな喜び」とを掛け合わせて表現した作品。
(2 min. 22 sec.)

展覧会テーマ

「しなやかに、したたかに」

自分が、どんなに生きづらい社会的イデオロギーや歴史的システムの中にあっても、天災に襲われ、戦時下で全ての生活が破壊されたとしても、女性たちは、したたかに、生きる道を選択し、その中に喜びや楽しみを見出していく。竹のようにしなやかに、曲がっても折れることなく生きる女性たち、しかも、その中で、女性であることを肯定し、謳歌しているようにも見える。その姿は強く、美しい。
この展示では、日本のメディア芸術界において、女性が女性を表現することに取り組んできたアーティストたちをキュレーションした。 「自分」という一貫性を持ち、その生き方や美意識、運命までをも肯定しながら生きて行く女性たち、その「したたかさと、しなやかさ」を感じてもらえれば幸いである。

企画ディレクター 岡本 美津子

参加アーティスト

<企画展 Birdraum 07>
近藤 聡乃 [日本]
1980年、千葉県生まれ。アーティスト・マンガ家。2008年よりニューヨーク在住。
http://akinokondoh.com

こうの 史代 [日本]
1968年広島県生まれ。マンガ家。

くわがた [日本]
1992年山梨県生まれ。映像作家、アニメーション作家。
http://kwgtms.tumblr.com/

水尻 自子 [日本]
1984年青森県十和田市生まれ、東京都在住。映像作家。
http://www.shiripro.com

真珠子 [日本]
1976年生まれ。熊本県天草生まれ。画家、イラストレーター、映像作家、インスタレーション作家、パフォーマー。2004年、“原宿ガール”生みの親グウェン・ステファニーの作品イラストを手がけた。
http://www.yan-oki.com/

しし やまざき [日本]
1989年、神奈川県生まれ。アニメーション作家。
http://www.shishiyamazaki.com

<アニメーション上映 Metro Kinokulturhaus>
荒井 知恵 [日本]
1971年生まれ。文化学園大学造形学部デザイン・造形学科准教授。

胡 嫄嫄 [中国]
1986年、中国南京市生まれ。2012年、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。

冠木 佐和子 [日本]
1990年生まれ、東京都出身。多摩美術大学卒業。 イラストレーター、アニメーション作家。
http://uykom.exblog.jp/

こぐま あつこ [日本]
徳島県生まれ。アニメーション作家。
http://koguma.tv/profile/index.html

久下沼 朱沙 [日本]
東京生まれ。イラストレーター。
http://ayasacream.blogspot.jp/

久野 遥子 [日本]
1990年生まれ。アニメーション作家、マンガ家。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
http://kunoyoko.tumblr.com/

松本 紗季 [日本]
アニメーター、アニメーションディレクター
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻卒業。
http://37do.main.jp

白石 慶子 [日本]
1985年東京生まれ。アニメーション作家、マンガ家。
http://keikoshiraishi.com/

若見 ありさ [日本]
アニメーション監督&ワークショップ講師&イラストレーターアニメーション監督。
http://www.arisawakami.com/

山田 尚子 [日本]
京都府出身。2004年、京都アニメーションに入社。TVアニメーション『けいおん!』『けいおん!!』『たまこまーけっと』、『映画けいおん!』(05年)、『映画 聲の形』(06年)監督。

イベント

■オープニングパフォーマンス
出演:真珠子
日時:3月16日(木) 19:00〜
会場:Bildraum 07
オープニングイベントとして、真珠子のパフォーマンスとライブドローイングを行います。

■キュレーター・トーク 「 しなやかに、したたかに」
出演:こうの 史代 モデレーター:岡本 美津子 (本企画ディレクター)
日時:3月17日(金) 15:30〜
会場:Bildraum 07
本企画展のテーマである日本女性の「しなやかさ」や「したたかさ」を視点に、日本のアニメーション表現について、出展作家であるこうの史代氏と企画ディレクター岡本美津子氏がトークします。

■ワークショップ
講師:真珠子
日時:3月17日(金) 18:00〜 & 19:30〜
会場:Foyer, Metro Kinokulturhaus
定員:各回8名
真珠子の絵のルーツである日本の書道。真珠子オリジナルの書体をレクチャーします。

共催イベント

■特別スクリーニング 『この世界の片隅に』
会場:Metro Kinokulturhaus
舞台挨拶:こうの 史代 3月16日(木)
日時:3月16日(木) 21:00〜 /3月19日(日) 11:30〜
女性監督作品の映画祭である「tricky women」で、男性監督片渕須直氏の作品を特別上映。

■講演 『この世界の片隅に』
会場:Metro Kinokulturhaus
ゲスト:こうの 史代 講演者:ジャクリーヌ・ベルント(京都精華大学教授)
日時:3月17日(金)13:00〜15:00
京都精華大学教授ジャクリーヌ・ベルント氏が映画『この世界の片隅に』の原作者こうの史代氏を招いて、同作品についての講演を行います。

上映

■「しなやかに、したたかに」キュレーションプログラム

日時:3月17日(金)21:00〜 /3月18日(土) 19:00〜
会場:Metro Kinokulturhaus
物理的、時間的、空間的な制約を離れたアニメーションという手段を得て、女性たちは、実に自由に、スクリーンの上を闊歩する。彼女たちが描く表現は、無垢な少女であると同時に、人々を惑わせる小悪魔的な存在でもある。女性たちは、おそらく”本能的に”自分に潜む多重性を、生まれながらに受け入れており、外部のいかなる状況に対しても、その多様性によりしなやかに対応していく力がある。このプログラムでは、日本在住の女性作家による女性の存在の表現を集めてみた。女性ならではの「自由」を見る人に満喫してほしい。
1 『電車かもしれない』 近藤 聡乃 4’00” (第6回アニメーション部門奨励賞)
2 『パピヨンよし子』 真珠子 3’25”
3 『やますき、やまざき』 しし やまざき 2’22” (第17回アニメーション部門審査委員会推薦作品)
4 『夏のゲロは冬の肴』 冠木 佐和子 2’59” (第17回アニメーション部門審査委員会推薦作品選出作家)
5 『The Blooms』 久下沼 朱沙 5’40” 
6 『夕化粧』 胡 嫄嫄 10’19” (第16回アニメーション部門審査委員会推薦作品)
7 『春の枕木』 松本 紗季 2’04”
8 『かまくら』 水尻 自子 5’22” (第17回アニメーション部門審査委員会推薦作品)
9 『Airy me』 久野 遥子 5’38” (第17回アニメーション部門新人賞)
10 『KiyaKiya』 近藤 聡乃 6’39” (第16回アニメーション部門審査委員会推薦作品)
11 『かくれん坊』 白石 慶子 7’52”
12 『Birth-つむぐいのち』 若見 ありさ/荒井 知恵/こぐま あつこ 19’04”(第6回アニメーション部門審査委員会推薦作品選出作家)

  • 『Airy Me』

  • 『夏のゲロは冬の肴』

  • 『夕化粧』


『たまこラブストーリー』

山田 尚子

[2013/長編アニメーション/第18回アニメーション部門新人賞]

高校3年生に進級した主人公・北白川たまこの頭の中は、大好きなお餅のことばかり。学校の帰り道、たまこは仲の良い友人たちと進路の話をしていた。不安を抱えながらも将来のことを考えている友人たちに対して、彼女は何気なく、将来は家業のお餅屋を継ぐと答える。周りが変わっていく予感を少しずつ感じ始めた頃、たまこは幼なじみの大路(おおじ)もち蔵(ぞう)から、東京の大学へ行くことを告げられる。幼い頃からもち蔵とずっと一緒に過ごしてきたたまこにとって、それは思いもよらないことだった。そしてもち蔵から「俺、たまこが好きだ」と告白を受ける―。突如訪れた“恋”というきっかけが、一人の少女を大人の階段へと導く。テレビアニメーション『たまこまーけっと』の続編となる青春物語。
(83 min. 50 sec.)

参加概要

会期: 2017年3月15日(水)〜3月19日(日) 映画祭
2017年3月16日(木)〜3月23日(木) 本企画展
13:00〜18:00(日・月休み)
3月18日(土)11:00〜16:00
本企画展会場: Bildraum 07 (Burggasse 7-9, 1070 ウィーン オーストリア)
映画祭会場: Metro Kinokulturhaus (Johannesgasse 4, 1010 ウィーン オーストリア)
Facebook: https://www.facebook.com/JMAF.WIEN.trickywomen2017
入場料: 無料
主催: 文化庁
共催: tricky women 2017事務局
協力: ギャラリーBildraum
企画ディレクター: 岡本 美津子(東京藝術大学大学院映像研究科教授)
事業アドバイザー: 古川 タク(アニメーション作家)
毛利 嘉孝(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)
企画・運営: 一般財団法人NHKインターナショナル

参加フェスティバル

tricky women 2017

会期:2017年3月15日(水)〜19日(日)
http://www.trickywomen.at/en

14回目となるtricky women 2017は「日本」をテーマに開催されます。映画祭ではフェスティバルがキュレーションした日本人監督の短編アニメーションプログラム3本の上映をはじめ、ワークショップ、講演、ライブ・パフォーマンスなど多彩なプログラムが組まれています。市内2カ所のギャラリーでは文化庁メディア芸術祭海外メディア芸術祭等参加事業が主催する企画展のほかにも、日本関連の展示が予定されています。コンペティション上映では、2名の日本人監督がノミネートされています。また、本展の企画ディレクターを務める東京藝術大学大学院映像研究科教授の岡本美津子氏は、今年の映画祭の国際審査委員にも就任しています。

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