- 企画展&上映
アルス エレクトロニカ フェスティバル 2018 - エラー展 不完全というアート -
文化庁メディア芸術祭は、メディア芸術海外展開事業として、オーストリア・リンツで2018年9月6日から10日まで開催されるアルス エレクトロニカ フェスティバル2018 /Ars Electronica Festival 2018に参加致します。
テーマ展覧会『ERROR』に、第21回エンターテインメント部門新人賞の『MetaLimbs』(佐々木智也/MHD Yamen SARAIJI)、及び、同優秀賞の『INDUSTRIAL JP』(INDUSTRIAL JP)を出展します。
なお、『MetaLimbs』の開発者である佐々木智也さん・MHD Yamen SARAIJIさんは、現地に渡り、デモンストレーション等を行います。
また、第21回アート部門審査委員会推薦作品『AI DJ Project』(徳井直生/堂園翔矢)が、アルス エレクトロニカが主催する国際コンペティション『Prix Ars Electronica 2018』でHonorary Mentionを受賞し、今回のフェスティバルにおける受賞作品展『CyberArts』での紹介展示を協力支援しています。
更に、上映イベント『Ars Electronica Animation Festival』においても、第21回受賞作品の紹介上映を行います。
アルス エレクトロニカは、1979年から始まる最先端の『Art, Technology and Society』を切り取るフェスティバル。世界中から、専門家が集い、オーストリア・リンツの様々な場所で催される展覧会、パフォーマンス・イベント、国際会議を通して、議論を深め、新しい繋がりを生み出しています。
テーマ展覧会『ERROR』
2018年のテーマは『ERROR』。どの時点から、エラーはミスや間違いになるのでしょう?
エラーのうち何が予想外のアイディアや発明につながるのでしょうか?
またいつそれが見逃され、エラーが意図的なエラーになってしまうのでしょうか?
エラーがミスではなく、可能性になることを展覧会を通して考察します。
“MetaLimbs” (2017)
Genre:ガジェット
Artist:佐々木 智也/MHD Yamen SARAIJI [日本/シリア]
第21回 エンターテインメント部門 新人賞
2本のロボットアームを装着し、足の動きをマッピングすることで、自在に操ることができる「新たな腕」を増やす作品。ロボットアームは肩から背負い、左右の足の甲と膝に取り付けられたセンサーが脚の動きをトラッキングしてアームを動かし、足の指を動かすとロボットハンドも動く。ロボットハンドには触覚センサーが取り付けられ、ロボットハンドの感覚が足にフィードバックされる。従来の義手や義足のように身体感覚を補うだけでなく、アームの先にハンダゴテなどを付け替えることによって、人間の身体能力を超越した機能をも付与できる。テクノロジーのトレンドが補綴技術から人間拡張技術へと移り変わるなかで、人間の身体感覚が技術によってどう変化するかを提起する。
©Tomoya Sasaki, MHD Yamen Saraiji
“INDUSTRIAL JP” (2017)
Genre:映像・音響作品
Artist:INDUSTRIAL JP [日本]
第21回 エンターテインメント部門 優秀賞
日本の各地に点在する町工場内の音のフィールドレコーディング、工作機械が稼働する映像をサンプリングし、再編集によって楽曲化・ミュージックビデオ化して配信する音楽レーベル。バネやネジなどを製作する工場と多くのミュージシャンがコラボレーションし、アナログな工作機械の稼動音をクラブミュージックに仕上げ、2018年3月までに7作品がリリースされている。響き渡る機械の動作音と油に包まれながら動き光る工作機械は一定のリズムを刻み続け、それが美しい音と映像となって表現される。レーベル設立のきっかけは、グローバル化による国内産業縮小の影響を強く感じたことだという。日本の町工場の魅力を発信し、国内の製造業を盛り上げる一助となることを目指している。ウェブサイトには各工場へのインタビューが掲載され、音楽を通じて、町工場の高い技術力や、それにより生み出される最先端の製品の魅力を発信するプラットフォームとなっている。
©INDUSTRIAL JP
Prix Ars Electronica 2018 受賞作品展『CyberArts』
Prix Ars Electronica は1987年から始まったメディアアートの分野で世界でもっとも注目されている賞です。
最新分野にスポットライトを当て、またそのカテゴリーは広く、テクノロジーの未来を見据えています。
ゴールデンNica賞はメディアアートのオスカー賞と言われ、毎年、3000以上のエントリーが80か国以上からあります。
“AI DJ – A dialogue between AI and a human” (2017)
Genre:メディアパフォーマンス
Artist:徳井 直生/堂園 翔矢 [日本]
第21回 アート部門 審査委員会推薦作品
楽曲の特徴を学習した人工知能(AI)と人のDJが、相手の選曲を受けて交互に曲をかけあう。AIは相手の曲を解析し次の曲を選曲、ターンテーブルを用いてミックスまでを行ない、時として人の想像を越える選曲で我々を驚かせる。人とは異なるオルタナティブな知能としてのAIと人、「ふたり」のDJの「かけあい」を通して、両者間の対話、共創の可能性を探る。
©2017 Qosmo,Inc.
上映
”21st Japan Media Arts Festival Award-winning Program”
第21回文化庁メディア芸術祭:アニメーション部門、エンターテインメント部門、アート部門の受賞作品を収録。
時代を映し出す文化庁メディア芸術祭のトレンドをアーカイブします。
会場 | Moviemento Cinema "Movie 1". OK Platz 1, 4020 Linz |
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スケジュール |
9月7日(金)18:00- 冒頭で簡単な作品説明あり 9月9日(日)20:00- 9月10日(月)19:00- |
レポート
2018年 10月 更新オーストリア・リンツで開催されたアルス エレクトロニカ フェスティバル2018(9月6日~9月10日)における出展が無事に終了しました。
フェスティバル主催者によると、今年は54か国から1357名のアーティスト、科学者らを迎え、614もの企画が催され、世界中から396の大学や研究機関、美術館、企業などが参加・協力して実現、40か国400を超えるメディア取材が行われたとのことです。
多国籍な来場者を迎えるため、ガイドツアーは現地のドイツ語や英語のみならず、アラブ語からロシア語まで13言語に渡り行われていました。
国を超えて子供から大人まで、専門家から一般の方まで楽しめる、アートとテクノロジーと社会を考えるフェスティバルの実際を経験する出展となりました。
今回、メディア芸術海外展開事業として出展した「MetaLimbs」「INDUSTRIAL JP」「AI DJ Project」の展示の様子をリポートします。
“MetaLimbs” (2017)
佐々木 智也氏のコメント
私たちの作品は、メイン会場の受付近くの立地の良い場所での展示となりました。おかげでたくさんの来場者に観て、体験していただくことができました。会場では家族連れや子供の姿も多く、また多言語での案内サービスがあるなど、国籍や年齢に限らず幅広く受け入れられているイベントだと感じました。作品展示を通じて異分野のアーティストと交流し、新しいアイデアの議論ができるなど、とても充実した機会となりました
MHD Yamen SARAIJI氏のコメント
アルス エレクトロニカは欧州や国際社会のアイデアをつなぐ、優れたプラットフォームであり、2018年のフェスティバルでは、欧州の現代アートやメディアアートを独自の観点から提示しました。私たちの展示は体験型であったことから非常に注目を集め、アーティストや学者の方々との様々な議論にも発展しました。そこで私は、未来における機械と人間の関係性の拡大や共生、新たな応用の形が広がっていく可能性について、数名の参加者たちと議論しました。
“INDUSTRIAL JP” (2017)
メイン会場 POST CITY 地下フロアの一室。旧型の機械や配管群が壁を覆う小部屋での上映で、異彩を放つ展示となった『INDUSTRIAL JP』。
“AI DJ – A dialogue between AI and a human” (2017)
受賞作品展会場OKセンターの地下へと降りる階段踊り場での映像上映という、こちらも意表を突く展示となった『AI DJ Project』。