参加フェスティバル

2022年9月7日―9月11日
オーストリア

アルス エレクトロニカ フェスティバル(2022)

一覧に戻る

フェスティバル概要

「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」は、芸術・先端技術・文化の祭典で、メディアアートに関するイベントとしては、世界最大級の規模を誇ります。今年度は“Welcome to Planet B – A different life is possible. But how?”をテーマに、オーストリア・リンツで行われます。

世界的なパンデミックの影響により、過去2年間はオンサイトとオンラインのハイブリッド開催でしたが、今年度は3年ぶりにオンサイトでの開催となります。文化庁メディア芸術祭海外展開事業では、文化庁メディア芸術祭の受賞作品、および受賞作家の作品を現地で展示するとともに、アーティスト2名をリンツに招聘し、フェスティバルにご参加いただきます。

アルスエレクトロニカ・フェスティバル2022
日程: 2022年9月7日(水)~11日(日)
場所: ヨハネス・ケプラー大学他リンツ市内(オーストリア・リンツ)
フェスティバルテーマ:「Welcome to Planet B – A different life is possible. But how?」

   


文化庁メディア芸術祭による出展企画

今年の企画ディレクターには、アートディレクター、キュレーターの山本麻友美氏を迎えました。本企画では、『あつまるな!やまひょうと森』で第25回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞したアーティストの山内祥太氏の『舞姫』と、第25回文化庁メディア芸術祭アート部門新人賞の『三千年後への投写術』の2作品をアルスエレクトロニカの会場にて展示いたします。また、『舞姫』はパフォーマンスを実施いたします。(雨天中止)

主催:文化庁
企画ディレクター:山本麻友美(キュレーター/アートマネージャー/京都芸術センターアーツアドバイザー)


山本麻友美
キュレーター/アートマネージャー/京都芸術センターアーツアドバイザー

2000年の開館当初から、京都芸術センターにて国際共同プロジェクトや展覧会等、若手芸術家の育成、支援を目的とした多様な事業に携わる。京都芸術センターチーフプログラムディレクター(2016-2021)、「KYOTO STEAM-世界文化交流祭-」アートディレクター(2021)等を経て、現職。これまでの主なキュレーションに二条城等を会場とした「東アジア文化都市2017 京都:アジア回廊 現代美術展」(2017)、コロナ禍に行ったオンライン事業「光冠茶会」(2021)等。2022年、倫理の共有を伴う交換を原理としたインスティチューションKyoto Interchangeを開始。


企画キュレーションテーマ:
「next to me, next to you」

⼤規模な⾃然災害やCOVID-19、ロシアのウクライナ侵攻以降、私たちの中の感覚や考え⽅にも変化が⽣まれ、他者のことを思いやるあるいは他者からの影響を憂う機会が増えたと感じています。多くの⼈が、家族や友⼈、⾝近な⼈、さらに会ったことはないけれど、同じ地球で今、同じ時を⽣きている⼈々や⽣き物、それらを含めた環境、すべてが影響を与え合っていることを改めて実感したのではないでしょうか。世界は確実につながっています。
では、バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller、1895 – 1983)の⾔う「宇宙船地球号」のように、すべてがつながり、隣り合った状態で、私たちはどこに向かうことができるでしょうか。それは、もう随分前から向かう先を⾒失っているように思いますが、まだ沈んではいません。
リセットでもなく、諦めでもなく、着実に前に進むためのヒントのひとつは、隣にいる⼈、⾝近にいる⼈との想像⼒を介したコミュニケーションです。またそこでは、⽣きるために⼈が獲得した知恵とも⾔える“ユーモア”や、想像⼒の原点ともなる“好奇⼼”と、それを⽣み出す様々な意味での余⽩(余裕や遊び)が⽋かせません。テクノロジーは世界を狭くしたとも⾔われますが、物理的にも世界中の⼈が、全員私の、そしてあなたの隣⼈である現代において、「お隣にどうぞ」、あるいは「お隣いいですか」と、気軽に⾔い合うことのできる社会であってほしいと思います。
今回紹介する作品はどれも、ユーモアや好奇⼼を湛えつつ、⾃分とは違う誰か、あるいは何かを想像させる要素を持ち、他者とのコミュニケーションの回路を拓くキーとなりうるものです。それらを通して、あなたの隣にあるものを⾒つめ、あるいは誰かの隣に⾝を置いてみることを想像してみてください。あらためてそこから始めることに希望があると感じています。

メディア芸術海外展開事業アート部門、エンターテインメント部門 企画ディレクター
山本麻友美

[戻る]

[出展報告を見る]


出展作品:

『舞姫』山内祥太

「第25回文化庁メディア芸術祭」アート部門優秀賞を受賞したアーティスト、山内祥太による作品。野外に設置された大型サイネージに「人間の皮をかぶったゴリラ」の映像と詩を投影。パフォーマンスでは、生身のパフォーマーがモーションキャプチャーを取り付けたスーツを介して、サイネージのゴリラと繋がる、パフォーマーと映像を同期させたショー を実施します。
Photo by TAYAMA Tatsuyukiレビュー:
テクノロジーを「人の皮をまとったゴリラ」として擬人化し、対峙するパフォーマーの動きと同期させることで、人とテクノロジーの関係に新しい視座を拓く。人間とテクノロジーの相互依存関係は、恋愛関係や親子関係のような身近な感覚にも置き換え可能だ。多くのコミュニケーションがテクノロジーを介して行われる現代、私たちの目の前にあるもの、あるいは、そばにあるものは何かを問いかける。

作品名 『舞姫』
アーティスト 山内祥太
制作協力 プログラミング:曽根光揮
3Dモデリング :大石雪野
衣装:Kurage
サウンド:小松千倫
展示場所 ヨハネス・ケプラー大学 Sound Park
パフォーマンス日時(CEST) 2022年9月7~9日 ① 15:00~ ② 18:00~ (30分/回)
2022年9月10日  ① 15:00~ ② 19:00~ (30分/回)
*雨天中止
関連リンク クリエイターズファイル/山内祥太
アルスエレクトロニカ・フェスティバル2022公式サイト「舞姫」

『三千年後への投写術』平瀬ミキ

記録媒体として古くから用いられている石という素材に、精密な加工技術を施す ことによって、電力の使用を前提としない、三千年後にも残りうる可能性を持つ新たな記録媒体としてのあり方を提示した作品。現地では、同作品3点を展示します。
レビュー:
記録媒体として石を用いることで、電気を持たなかった過去と、エネルギー問題に直面する現在、また電気を失ってしまうかもしれない未来を想像させる作品。記録を刻むというプリミティブな行為から、またそこに刻まれた記録に触れることから、多くの人、多くの物に思いを馳せることができる。

作品名 三千年後への投写術
アーティスト 平瀬ミキ
JMAF受賞タイトル 第25回 アート部門 新人賞
展示場所 ヨハネス・ケプラー大学 Science Park 4
関連リンク クリエイターズファイル/平瀬ミキ
アルスエレクトロニカ・フェスティバル2022公式サイト「三千年後への投写術」

[戻る]

[出展報告を見る]


クリエイターズファイル2022(アート部門/エンターテインメント部門):

アルスエレクトロニカ2022のテーマ「Welcome to Planet B – A different life is possible. But how?」、文化庁メディア芸術海外展開事業のテーマ「next to me, next to you」を元に、企画ディレクターが選出した6組のアーティストと作品を紹介。

選出クリエイター 山内祥太
平瀬ミキ
スクリプカリウ落合安奈
林洋介/針谷大吾
山崎阿弥+マイケル・スミス-ウェルチュ
Konel
関連サイト クリエイターズファイル2022 アート&エンターテインメント部門

[戻る]

[出展報告を見る]

出展報告

3年振りにリアルのみでの開催となったアルスエレクトロニカ・フェスティバル2022は、メイン会場であるヨハネス・ケプラー大学を含めオーストリア・リンツ市内の11ヵ所の会場で、2022年9月7日(水)~11日(日)の5日間にわたり開催されました。
今回の企画ディレクターには、アートディレクター、キュレーターの山本麻友美氏を迎え、「next to me, next to you」をテーマに、第25回文化庁メディア芸術祭アート部門の受賞者である、山内祥太氏、平瀬ミキ氏2名のアーティストに現地へ渡航いただき、パフォーマンスや作品展示を実施いたしました。

アルスエレクトロニカ・フェスティバル2022
参加アーティスト:953アーティスト
協賛パートナー:337
イベント数:425イベント
来場者:71,000名

企画ディレクターコメント

企画ディレクター 山本麻友美
キュレーター/アートマネージャー/京都芸術センターアーツアドバイザー
「搬出も終え会場を後にする時に、フェスティバルのディレクターMartin Honzik氏が「JMAF(文化庁メディア芸術祭)はレジェンドになった。おめでとう」と声をかけてくれました。リンツに実際に足を運び、世界中から来たアーティストの作品に触れ、最前線を知ることができたのは、忘れられない経験になりました。今回展示を行った平瀬ミキさんと山内祥太さんの作品が、予想以上に観客に受け入れられたことも純粋に嬉しかったです。世界の潮流の中で、日本から発信するメディア芸術に期待されていること、これから実現できうる可能性を体感できる機会はそうありません。この事業に携わる人たちが時間をかけて構築してきた関係性を継続し、今後も貴重な機会が多くのアーティストやキュレーターに引き継がれていくことを期待します。」

出展作品:『舞姫』

ヨハネス・ケプラー大学内にある緑豊かなSound Parkに大型サイネージを設置し展示された『舞姫』は、「人間の皮をかぶったゴリラ」の映像とスピーカーから流れる大音量の音楽が人目を引き、道ゆく人が次々に足を停めてじっくりと鑑賞していました。また、アーティストへ熱心に質問をしている方も多く見られました。
パフォーマンスは、雨の合間を縫って、会期中に計7回実施。1回につき最大300名と多くの人々が鑑賞に集まりました。鑑賞者はサイネージのゴリラとリンクするパフォーマーの動きに魅了された様子で、本作はフェスティバルの中で最も注目された作品の一つになりました。

アーティスト:山内祥太
展示場所:ヨハネス・ケプラー大学 Sound Park

パフォーマンス実施日時:2022年9月7、9、10日(計7回)
アーティストコメント 山内祥太

「今回『舞姫』をArs Electronicaという大舞台での発表を通して「海外でも伝わった。」という強い実感を獲得できたことは、今後の作家活動の励みとなっただけではなく、次につながる大きな一歩となりました。それを支えてくれたプログラマーの曽根さんを始め、キュレーターの山本さん、そして文化庁、事務局のVIPOの皆様、Arsに派遣されてるプロジェクトマネージャーの鹿又さんには心からの感謝を伝えたいです。ありがとうございました。」

出展作品:『三千年後への投写術』

第25回文化庁メディア芸術祭アート部門で新人賞を受賞した平瀬ミキの『三千年後への投写術』は、Ars Electronica Gardens Exhibitionの展示会場であるScience Park 4内に、新作1点を含む計3点が展示されました。
暗室で鑑賞する作品の性質上、普段はテレフォンブースとして使用されている小さなスペースを利用して展示したため、一度に鑑賞できる人数も1~2名程度となり、鑑賞者は暗闇の中で作品としっかりと向き合うことができる空間となりました。光と音の比較的派手な展示が隣接していましたが、暗室に入るとその音も遠くなり、静かな空間の中で1人で見る作品はより際立ち鑑賞者の印象に残ったようです。作品を鑑賞している来場者の表情は伺うことができませんが、鑑賞後に作品のバックグラウンドについて興味深くご質問される来場者が多くいらっしゃいました。

アーティスト:平瀬ミキ
展示場所:ヨハネス・ケプラー大学 Science Park 4
アーティストコメント 平瀬ミキ
「自身では作品の性質的に、アルスエレクトロニカフェスティバルに出展する機会のある作品だと思っていなかったので、今回の事業による企画のテーマとキュレーションがあって巡ってきた機会だったと思っております。
フェスティバルの会場で他の作品と並び、改めて自分の作品の意味や立ち位置を考えることになったことと、現地での鑑賞者の様子を見て、海外での他の展示への出展に興味を持つきっかけになりました。」

リンツ市内のその他展示会場、リンツ市内の様子

[戻る]